ニュースで「KISSのギター、エース・フレーリーが亡くなった」と聞いた朝、
ああ……と思って、しばらく手が止まった。
その瞬間、あの夏の公民館の光景が立ち上ってきた。
1981年の夏、秋田の片田舎での出来事だ。
白い壁。
飾り気のない板張りの床。
けれど彼らが機材を持ち込むと、その空間が一気にざわめき出す。
「何が始まるんだ?」って、見ていた私たちのほうがドキドキしてた。
ギターの子はエースになりきってピックを投げ、
アンプはブウブウ鳴り、ドラムはちょっと走って、
ボーカルの–当時付き合っていた彼–はマイクを握りしめ、
全身を使って歌っていた。
音はバラバラ、でも心はぴたりと揃っていた。
汗と音とパワーが混じって、若さの熱と、どうにもならんまっすぐさがあった。
音も恋も人生も、まっすぐには進まんかった。
けど、そのゆがみの中に、光があった。
ニュースを見たあと、久しぶりに「Love Gun」を聴いてみた。
イントロのギターが鳴った瞬間、胸の奥がキュッとなった。
あの白い壁の前で鳴っていた、不格好でまっすぐな青春の音が、
今も、心のどこかで鳴り続けてる。